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2017年1月7日 星期六

銀河鉄道の夜

銀河鉄道の 夜


宮沢賢治






一、午后ごごの授業




  1. 「では みなさんは、
  2. そういうふうに 川だ とわれたり、
  3. 乳の流れたあとだ
    と云われたり していた このぼんやりと 白いものが ほんとうは 何か ご承知ですか。」
  4. 先生は、
  5. 黒板に つるした 大きな 黒い 星座の 図の、
  6. 上から 下へ 白く けぶった 銀河帯のような ところを しながら、
  7. みんなに といを かけました。








  8. カムパネルラが 手をあげました。
  9. それから 四五人 手をあげました。
  10. ジョバンニも 手をあげようとして、
  11. 急いで そのまま やめました。
  12. たしかに あれが みんな 星だと、
  13. いつか 雑誌で 読んだの でしたが、
  14. このごろは ジョバンニは まるで 毎日教室でも ねむく、
  15. 本を 読む ひまも 読む 本も ないので、
  16. なんだか どんなことも よくわからない という 気持ちが するの でした。






  17. ところが 先生は 早くも それを 見附みつけたの でした。



  18. 「ジョバンニさん。 あなたは わかっているの でしょう。」






  19. ジョバンニは いきおいよく 立ちあがりましたが、
  20. 立って 見ると もうはっきりと それを 答えることが できないの でした。
  21. ザネリが 前の席から ふりかえって、
  22. ジョバンニを 見て くすっと わらいました。
  23. ジョバンニは もうどぎまぎして まっ赤に なって しまいました。
  24. 先生が また云いました。






  25. 「大きな 望遠鏡で 銀河を よっく調べると 銀河は 大体何でしょう。」





  26. やっぱり星だと ジョバンニは 思いましたが こんども すぐに 答えることが できません でした。





  27. 先生は しばらく 困ったようす でしたが、 を カムパネルラの方へ 向けて、






  28. 「では カムパネルラさん。」と 名指しました。
  29. すると あんなに 元気に 手をあげた カムパネルラが、
  30. やはり もじもじ 立ち上ったまま やはり答えが できませんでした。







  31. 先生は 意外なように しばらく じっと カムパネルラを 見て いましたが、
  32. 急いで 「では。 よし。」と 云いながら、
  33. 自分で 星図を しました。







  34. 「この ぼんやりと 白い銀河を 大きな いい望遠鏡で 見ますと、
  35. もうたくさんの 小さな星に 見えるのです。
  36. ジョバンニさん そうでしょう。」







  37. ジョバンニは まっ赤に なって うなずきました。
  38. けれども いつか ジョバンニの 眼の なかには なみだが いっぱいに なりました。
  39. そうだ ぼくは 知っていたのだ、
  40. 勿論もちろん カムパネルラも 知っている、
  41. それは いつか カムパネルラの お父さんの博士のうちで カムパネルラと いっしょに 読んだ雑誌の なかに あったのだ。
  42. それ どこでなく カムパネルラは、
  43. その 雑誌を 読むと、
  44. すぐ お父さんの 書斎しょさいから おおきな本を もってきて、
  45. ぎんがという ところを ひろげ、
  46. まっ黒なページ いっぱいに 白い点々の ある美しい写真を 二人で いつまでも 見たのでした。
  47. それを カムパネルラが 忘れるはずも なかったのに、
  48. すぐに 返事を しなかったのは、
  49. このごろ ぼくが、
  50. 朝にも 午后にも 仕事が つらく、
  51. 学校に 出ても もうみんなとも はきはき 遊ばず、
  52. カムパネルラとも あんまり 物を 云わないように なったので、
  53. カムパネルラが それを 知って 気の毒がって わざと 返事を しなかったのだ、
  54. そう 考えると たまらないほど、
  55. じぶんも カムパネルラも あわれなような 気がするの でした。






  56. 先生は また云いました。






  57. 「ですから もしも このあまがわが ほんとうに 川だと 考えるなら、
  58. その 一つ一つの 小さな星は みんな その川のそこの 砂や 砂利じゃりつぶにも あたるわけです。
  59. また これを 巨きな 乳の流れと 考えるなら もっと 天の川と よく似ています。
  60. つまり その星は みな、
  61. 乳のなかに まるで 細かに うかんでいる 脂油しゆの球にも あたるのです。
  62. そんなら 何が その川の水に あたるかと 云いますと、
  63. それは 真空という 光を ある速さで 伝えるもので、
  64. 太陽や 地球も やっぱり そのなかに うかんで いるのです。
  65. つまりは 私どもも 天の川の水のなかに んでいる わけです。
  66. そして その天の川の水の なかから 四方を見ると、
  67. ちょうど 水が 深いほど 青く 見えるように、
  68. 天の川の底の 深く遠い ところ ほど 星が たくさん 集って 見えした がって 白く ぼんやり 見えるのです。
  69. この 模型を ごらんなさい。」







  70. 先生は 中に たくさん 光る 砂のつぶの 入った
  71. 大きな 両面の とつレンズを 指しました。







  72. 「天の川の形は ちょうど こんな なのです。
  73. この いちいちの 光るつぶが みんな 私どもの 太陽と 同じように じぶんで 光っている 星だと 考えます。
  74. 私どもの 太陽が このほぼ中ごろに あって 地球が その すぐ近くに あると します。
  75. みなさんは 夜に このまん中に 立って このレンズの中を 見まわす として ごらんなさい。
  76. こっちの 方は レンズが うすいので
  77. わずかの 光る粒 すなわち 星しか 見えないの でしょう。
  78. こっちや こっちの 方は ガラスが 厚いので、
  79. 光る粒 即ち 星が たくさん 見え その遠いのは ぼうっと 白く 見える という 
  80. これが つまり 今日の 銀河の 説なのです。
  81. そんなら このレンズの 大きさが どれ位あるか
  82. また その中の さまざまの 星については
  83. もう時間ですから この 次の理科の時間に お話します。
  84. では 今日は その銀河の お祭なの ですから みなさんは 外へでて よくそらを ごらんなさい。
  85. では ここまでです。
  86. 本や ノートを おしまいなさい。」







  87. そして 教室中は しばらくつくえふたを あけたり しめたり 本を重ねたり する音が
  88. いっぱいでしたが まもなく みんなは きちんと 立って礼を すると 教室を 出ました。














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